更新日:2015年11月10日

富有柿の歴史

岐阜女子大学非常勤講師
学術博士 今井 敬潤(いまい きょうじゅん)さん

  岐阜における柿の歴史は古く、江戸時代中頃に全国規模で調査、集約された『産物帳』には、美濃国で49品種と最多の品種数がみられます。そして明治30年代になると、現在の甘柿の代表的品種「富有」が登場することになります。「富有」はもともと瑞穂市居倉の小倉長蔵氏宅地内の「居倉御所」と呼ばれていたもので、同地の福嶌才治(ふくしまさいじ)氏がこれを接ぎ木し、試作を重ね、各地の品評会や共進会などに出品しました。その優秀性が認められて絶賛を博し、急速に栽培が広がることになりました。現在、同地には「富有」の母木が市指定天然記念物として保存され、「富有柿発祥の地」の碑が建てられています。 「富有」の命名の由来は、中国の古典で徳について強調する『中庸』の「富有四海之内」によっています。徳があればその富は四海の内を有(たも)つという意味で、「富有」の前途洋々たることへの願いがこめられているように思われます。期待に違わず、「富有」は昭和の初めから平成の現在まで、柿のトップランナーとして走り続けており、特筆すべきことだと言えます。
 現在、わが国の柿の生産量は伸び悩み、世界3位ですが、世界的には生産量は増加しています。1位の中国を除き、2位の韓国、4位のブラジルなどでは「富有」が積極的に導入され、世界でも広く栽培されるようになってきています。

 ※瑞穂市商工会発行小冊子「瑞穂の宝もの『柿色彩々』」寄稿文を要約

富有柿は海外でも生産

 現在、柿(甘柿・渋柿)は世界で約460万トン(平成25年)も生産されており、約30年前の約100万トン(昭和55年)と比べ4.6倍の生産量となっています。このように、全世界で柿の人気が上昇していることがわかります。
 平成25年時点の国別生産量は、1位中国(354万トン)、2位韓国(35万トン)、3位日本(21万トン)、4位ブラジル(17万トン)、5位アゼルバイジャン(14万トン)となっており、日本以外でも柿がたくさん生産されています。
 もちろん富有柿も生産されており、瑞穂市で生まれた富有柿がさまざまな国で栽培されています。

生産量の表