美江寺城跡の写真
コミュニティへの誇り(1) 瑞穂市のソーシャル・キャピタル
 昨年末にも予告しましたが、この連載は別府観音堂堂守・三島英盛さんと、美江寺自治会長・矢野雅敏さんへ行った学生によるインタビューを掲載します。第1回として、なぜインタビューを行ったのか、なぜお二人になのかということをお伝えします。
 今回のタイトルにある「ソーシャル・キャピタル」は社会関係資本と翻訳される言葉で、最近コミュニティ活性化の文脈で使われるようになってきました。詳しい理論面は省きますが、どれだけ人が人間関係の規範・信頼・ネットワークを利用し、助け合っていけることだと考えるとよいでしょう。もう少しざっくり言うと、地域の中でどれだけの話を聞いてくれる人・助けになってくれる人がいるか。逆に話を聞けて助けられる人がいるか。そこまで大げさでなくても、なんとなく顔と名前を知っていて、最近見かけないな?逆に最近よく会うなと思うような人。そのような人間関係が、大は災害から小は醤油の貸し借りなどの困りごとがあった時に力となる。その力の源全体をソーシャル・キャピタルと呼びます。
 さて、読者の皆さんは、この「信頼できる人間関係の資本」をどれだけお持ちでしょうか?瑞穂市は新規に流入する住民により「人口が増加している町」「若い町」と言われています。一方こちらは全国的な傾向ですが、自治会(町内会)活動の負担の大きさや、運営の不透明性をあげつらい、加入率が低下する傾向にあると言われています。瑞穂市内では、人口流入地区では自治会加入率が低下し、逆に流出地区では高齢化や少人数化が進み、いずれも組織的活動が徐々に行いにくくなりつつある状況です。
 このままソーシャル・キャピタルが失われ続けると、将来の瑞穂市はどのような姿になるでしょうか?30年後、現在新築の住宅は老朽化し、空き家が目立つようになります。集住している高齢者は互いに顔も知らず我関せずで、体が動く人は(近隣店舗が閉店して)遠くなったスーパーや病院に自動車でかかれますが、そうではない人は現在よりずっと薄くなった“公助”に頼り、不自由な生活を送ることになると考えられます。
 このような悲惨な瑞穂市の未来に至らないためには、現在市内で必死に町づくりを行っている方にお話を伺うことが重要だと考えました。お二方とも、それぞれの地区の問題を抱えながらも、活性化に尽力されています。その中心になるのが「コミュニティへの誇り」だと考え、焦点を当てました。三島さんと別府地区は「別府観音」が、矢野さんと美江寺地区は「美江神社を中心とした祭りと芸能」が、それぞれの誇りとなっていると考えられます。
 この誇りを中心として、それぞれの人が、地区が、どのようにソーシャル・キャピタルを活用しようとしているのか。学生が自らの現住地についても考えて欲しいという思いも秘めながら、インタビューを敢行した連載となります。
令和2年2月5日更新
(朝日大学大学院経営学研究科教授・畦地真太郎)
撮影場所:美江寺城跡(中小学校)