更新日:2015年1月20日

十七条上街道町地内に係る市道路線の認定に関する市としての調査報告書

1.はじめに

 新聞紙上で報道され、市民の皆さんには少なからずご心配、ご迷惑をおかけしている市議会に設置された百条委員会の問題について、市としての行政事務はどうあるべきだったかを調査・検証するため、市議会とは別に独自に調査を行ってきました。
 その調査結果が出ましたので、報告させていただきます。

百条委員会とは・・・・

 平成26年第1回市議会定例会において、道路認定に係る議案に関連して地方自治法第100条の規定に基づく特別委員会が設置されました。いわゆる議会の「百条調査権」あるいは「百条委員会」といわれるものです。 
 この市議会の特別委員会の設置の要旨を整理すると次の3点です。

(1)市道認定の基準は、「瑞穂市市道編入基準」である。
(2)その基準を踏まえれば、路線名9-1256号線は市道認定できない。
(3)従って、認定できるように新しい要綱を作るよう指示した市長の行為は、親族会社に有益な結果をもたらした便宜供与である。

との内容です。
 そこで、市としては、以下の2点を中心に調査・検証を行いました。

(1)都市計画区域外における寄付採納に係る市道認定基準及び行政事務の実態はどうであったか、先ずその事実関係を正確に把握する。
(2)調査・検証によって明らかとなった事実が法令や条例等に照らして適正であったかどうか。

 これらを、明らかにすることによって市として反省すべきは反省し、より適正、適切な行政事務の執行ができる体制整備を行うことを目的としました。
 その調査の内容については、次のとおりです。

2. 調査内容の実態

(1)穂積町と巣南町の合併による課題

 瑞穂市は、穂積町と巣南町が合併して誕生しました。その際、すでに旧の2町で道路の寄付採納問題に違いがありました。合併する際に様々な事務の手順等が違っているので、合併協議会を立ち上げ検討してきましたが、その協議書を見ると町道の寄付採納の認定基準が違っており、その違いは「道路幅」「寄付を受ける時期」でした。

 本来であれば、合併時には統一した見解が示されるべきでしたが、それがなされないまま合併がなされ、その当時よりこの問題は担当者間で課題としてありました。

(2)都市計画区域外における道路の寄付採納はどのように行っていたか

 旧巣南町では「巣南町開発事業の適正化に関する指導要綱」があり、都市計画法に基づく「岐阜県宅地開発指導要領」を準用していました。従って、寄付採納を受ける際には、6mの幅員が一定の基準としてあったことが確認できます。

 旧穂積町は、全域が都市計画区域であるため都市計画法の適用を受け、開発許可等の指導がされ、開発許可の適用を受けない1000平方メートル未満の事業に関して寄付採納を受ける際には、背割り水路に接続する道路の場合、5mでも寄付採納を受けていた実態がありました。

 こうしたことから、寄付採納の基準に違いはあったものの、都市計画区域外における道路の寄付採納については、合併以後、今回の問題が起きる以前の過去7件の案件は、全て「岐阜県宅地開発指導要領」に準拠して寄付採納の事務を行っていたことが確認できます。

 つまり、県の基準に準拠していること、そして議会も認定してきたことが、寄付採納の条件であったといえますが、要綱等でその根拠を明確にしていなかったことが、行政の不作為、過失です。

(3)「瑞穂市市道編入基準」なる文書とは何か

 今回、問題となった「瑞穂市市道編入基準」とは一体どういうものかということですが、調査の結果次のようなことが判明しました。

(1)「瑞穂市市道編入基準」は、平成18年度から20年度に担当した職員が、前任者より事務を引き継いだなかで、自己において誰にも相談や指導も得ることなく文章化したもので、その目的は、自己の覚え、手持ち資料として作成した文書であった。
(2)作成は、市役所のパソコンを使って平成18年6月頃に行っている。
(3)あくまで自己の資料として作成したもので、まだ完成形ではなく、従って、内部決裁をとるようなことは全く行っていない。
(4)本人自身は、今回と同様の寄付採納事案(5件)については、その基準を適用したことはなく、これを使ってはいけないとの見解も述べている。
(5)この「瑞穂市市道編入基準」については、誰にも事務引継ぎをしていなかった。

(4)何故「瑞穂市市道編入基準」なる文書が使われたのか

(1)作成した職員が異動により事務から離れ、その際しっかりとした事務の引継ぎを行わなかった。
(2)次の担当者が、パソコン上の共有フォルダーにこの基準が内部資料としてあることを他の職員から教えられ、一つの内規的基準となる文書と思い込んでいた。
(3)内規的基準と思い込んだ職員は、自己においては寄付採納を受ける事案には一度も遭遇することなく、休暇に入ったが、次の担当者に「瑞穂市市道編入基準」があることを告げている。
(4)現在の担当者が、今回の事案に対応することとなり、回りの職員にも相談をしている。その際、内部資料の「瑞穂市市道編入基準」を見せ、それがあればそれで判断してよいのではとアドバイスを受けている。
(5)担当者は、これらアドバイスにより、まだ正式に申請があった訳でもない段階であったが、基準に沿った内容で、事業者からの相談に対して指導を行ってよいか決裁をした。
(6)決裁に回された文書には、この「瑞穂市市道編入基準」も添付されていたが、誰もが疑うことなく決裁してしまった。
(7)事業者への応対として、別に都市開発課の職員が宅地開発の参考資料として、県の「岐阜県宅地開発指導要領」からの2ページをコピーして渡していた。
(8)決裁後、担当者は業者に対し、市道編入基準の「通り抜けできない道路」については、寄付採納は難しい旨の意見を告げた。
(9)「瑞穂市市道編入基準」なるものを実際に見ていた職員は、ごく少数であり、ほとんどの職員は基準があることを概念的に知っている程度で、それがどういう経緯で作成されたものかを知る者はいなかった。
(10)因みに、都市計画区域外の宅地開発はまれな案件であり、過去直近の案件も平成20年6月で、以後、担当課の職員も異動で大半が変わっていて行政事務のチエック機能が充分に働かなかったところに原因、問題があった。

(5)市長のこの問題に対する対応

(1)親族である事業者から、市の指導の一貫性のなさの指摘を受け、事務に関係する部署の職員を集めて事務の実態を聞き取りした。

(2)その際、「瑞穂市市道編入基準」を初めて目にし、これでは正しい事務執行はできないと判断し、過去の事例も含め、よく調査し、県の基準も含めて正しい判断基準を早急に作成するよう指示した。

(3)この際、申し出た事業者は親族の企業であり、市長としての行政責任が問われる問題だとの指摘を受け、自ら皆に意見を求めた旨を告げている。

(4)市長の指示を受け、早速、過去の事例の調査と「岐阜県宅地開発指導要領」との整合性を検討し、市として基準となる要綱を作成する事務に入った。

3.行政事務としての検証と事実

 瑞穂市が合併した当時から本来統一した道路の寄付採納に関する明確な判断基準を要綱として策定していなかった事実が明らかになりました。

 しかしながら、過去に都市計画区域外における寄付採納に係る市道認定基準は、「岐阜県宅地開発指導要領」に準拠して事務を行っており、その数は7件です。

 これらは、過去の決裁文書の内容及び元部長職の職員の回答、過去の担当職員の証言からも明らかです。今回、全く効力のない「瑞穂市市道編入基準」なる文書が事務の判断に使われたことにより、議論を起こすことになったものです。

 市は、「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって市民の権利利益の保護に資することを目的」として、行政手続法の主旨に則り「瑞穂市行政手続条例」を策定しています。この条例によれば、市は、寄付採納による市道認定の基準を要綱として制定しておくべきでした。同条例第34条の規定では、「あらかじめ、事案に応じ、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない」と定めているからです。従って、この規定に違反していたことになり、このことは重大な不作為です。

 よって市では、これら調査により明らかとなった事実をもとに、職員の不作為、事務怠慢、指導監督不適正を根拠として、職員の懲戒処分を行うとともに管理監督者に対しても相応の処分を行いました。ただし、特別職に係る給与を減額する条例の制定は、11月の臨時議会において提出し、否決されました。

4.結論

 市議会で設置された百条委員会を契機に、市では行政事務の実態を精査し、どこに問題があったかを検証することになりました。結局、事務の基準と考えていた「瑞穂市市道編入基準」なる文書は、未完成の効力のない文書であったことが判明しました。都市計画区域外における事案としては、今回の市長の縁故企業の宅地開発事業に適用させたのみで、過去においての同様の事案7件については、全て「岐阜県宅地開発指導要領」を市の基準として当てはめて行政事務が執行され、議会認定も受けていました。
 従って、こうした事実を踏まえ、今回の事案についての道路認定に係る議案についても、市議会は、平成26年第2回6月定例会において認定の議決を出しています。このような経緯を踏まえると、市長の職員を集めての寄付採納に係る一連の道路認定事務の見直しを指示した行為は、特定企業を対象にした便宜供与とは考えられず、行政の最高責任者としての責任意識から、たまたま親族からの指摘を受けて道路寄付採納事務への聞取りにより、その不備を見いだし、正常な判断基準を策定するように指示したものです。

 市では、昨年、市長指示により2月7日に「瑞穂市民有地道路の寄附に係る取扱要綱」を作成して公表を行いました。さらにより公正の確保と透明性の向上を図るため、「瑞穂市宅地開発事業の適正化に関する指導要綱」を改正して、事前協議における審査基準も定め、今年2月27日に施行するようホームページに掲載して周知を図っています。

 以上の内容が市の調査結果と、今後の方向性です。これらを踏まえ、市民の皆さんの良識ある判断とご理解をお願いします。